世の中にある施設の中には、みんなの動きをマニュアル化した方が効率的で良い介護ができると思っている現場もあります。確かに皆が介護に対して同じ考えであれば、人間同士で意見がぶつかることもなく、会議を開けば全て同じ意見になるのでしょう。
一方で、必ずという言葉が人生にはなかなかあてはまらないように、たった一つに答えを固めてしまうのは、むしろその方が問題と捉える考え方もあります。実際に、人の価値観は多種多様です。相手のことを考えない一方的な介護をされて、強いストレスを感じてしまう利用者さんは少なくありません。
目の前にいる介護を必要とする人は、顔が違うのと同じように生き方も考え方も当然のように異なります。十人十色とよく言われますが、まさにその通りです。
また、介護をするうえでは、それを必要とするご本人と同時に、そのご家族とも向き合うことが前提となるのは言うまでもありません。仮にチームで同じ価値観だとしても、それに対してご本人は?ご家族は?となるとどうでしょう。
たった一つの方法を提示するよりも多くの選択肢を考え提供できる方が、より相手にとって必要な介護、希望される方法を提供できる可能性が広がるのではないでしょうか。
こうして考えてみると、価値観という引き出しを多く持てるチームは、相手の希望に一歩近づくための方法論を多く有するといえます。1+1が2となるチームは、1+1=1よりも、文字通りより多くの価値観を共有できるのです。
よって、介護士としてより良い環境で働きたいのであれば、ルール統制がしっかりしている場所よりも、スタッフ一人一人の声をしっかり組み上げ、柔軟に変化していける施設の方を選んだほうが、ベターだといえます。